構築物の評価
構築物とは、土地の上に定着する建造物、工作物、土木設備のことです。ただし、建物や建物附属設備は構築物から除かれます。
例えば不動産業を営んでいる場合、門や塀等の外構工事、フェンス、駐車場におけるアスファルト等が構築物となります。
相続税申告においては、土地や家屋の評価額に含まれない構築物を別途評価して相続税の計算を行う必要があります。
相続税申告における構築物の評価は、財産評価基本通達において下記の通り定められています。
- 構築物の相続税評価額
1.構築物の定義
構築物とは、建物や建物附属設備以外の土地の定着物のことです。
土地の定着物とは、土地の上に継続的に定着している物のことであり、建造物、工作物、土木設備等が該当します。具体的には、門、塀、フェンス、ガソリンスタンド、橋、トンネル、広告塔、運動場のスタンド、プール、舗装道路のアスファルト等が構築物となります。
民法第86条第1項においては、「土地及びその定着物は、不動産とする」と定められているため、構築物は不動産に該当します。
なお、不動産登記法第2条においては、「不動産は、土地又は建物をいう」と定められているため、構築物は登記をすることはできません。
- 民法上における構築物の位置づけ
2.構築物の評価
(1)評価単位
構築物の価額は、原則として、1個の構築物ごとに評価します。ただし、2個以上の構築物で分離するとそれぞれの利用価値を著しく低下させると認められる場合は、それらを一括して評価します。
なお、土地又は家屋と一括して評価するものは除かれます。例えば、家屋と構造上一体となっている設備等は家屋に含めて評価します。
(2)評価方法
構築物の価額は、その構築物の再建築価額から、建築の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額の100分の70に相当する金額によって評価します。
再建築価額とは、課税時期において新築するとした場合において、必要と見込まれる建築費用の金額のことです。
なお、償却費の額又は減価の額は、課税時期の属する年の1月1日における耐用年数省令に規定する耐用年数等に基づき定率法によって計算した金額とします。また、建築時から相続発生時までの期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とします。
- 構築物の評価額
{構築物の再建築価額ー(償却費の額の合計額または減価の額)}×0.7
【例】
評価対象:構築物(アスファルト舗装道路)
再建築価額:100万円
耐用年数:10年
定率法の償却率:0.200
相続発生時までの期間:9ヶ月(1年未満のため、1年)
- 構築物の評価額の計算
3.文化財建造物である構築物の評価
文化財建造物である構築物は、通常の構築物として評価した価額から、その価額に一定の割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価します。
- 文化財建造物である構築物の評価額
通常の構築物として評価した価額―(通常の構築物として評価した価額×一定の控除割合)
- 文化財建造物の控除割合
4.庭園設備の評価
庭園設備とは、庭木、庭石、あずまや、庭池等のことです。庭園設備は、その庭園設備の調達価額の100分の70に相当する価額によって評価します。
調達価額とは、課税時期においてその財産をその財産の現況により取得する場合の価額のことです。
- 庭園設備の評価額
その庭園設備の調達価額×0.7
5.附属設備等の評価
家屋の所有者が有する電気設備、ガス設備、衛生設備、給排水設備、温湿度調整設備、消火設備、避雷針設備、昇降設備、じんかい処理設備等で、その家屋に取り付けられ、その家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価額に含めて評価します。そのため、構築物としての評価は行いません。
なお、家屋の評価額に含まれていない門、塀、外井戸、屋外じんかい処理設備等の附属設備については、構築物として評価を行い、相続財産として計上する必要があります。
6.構築物の確認方法
(1)所得税の確定申告書における減価償却費の計算の明細
事業所得や不動産所得がある方は、所得税について毎年の確定申告をしていることが多いです。確定申告をしている場合は、事業所得や不動産所得における減価償却費の計算の明細を確認することで、構築物の詳細を把握することができます。
なお、所得税における減価償却費と相続税における償却費の額又は減価の額は、計算方法が異なるため注意が必要です。
(2)償却資産申告書における種類別明細書
償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で一定の要件を満たすもののことです。償却資産の所有者は、償却資産の所有状況及び明細をその所在地の市町村長に毎年申告する必要があります。
構築物を所有している場合は、償却資産として申告が必要となる可能性があります。償却資産申告書を提出しているときは、種類別明細書を確認することで構築物の詳細を把握することができます。
なお、償却資産申告書における評価額と相続税における評価額は、計算方法が異なるため注意が必要です。
7.小規模宅地等の特例との関係
小規模宅地等の特例とは、被相続人や同一生計親族の事業用や居住用の宅地等について、一定の要件を満たした場合にその宅地等の評価額を減額することができるという特例です。
小規模宅地等の特例における特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等は、宅地等の上に建物や構築物等があることが一つの要件とされています。
例えば、駐車場を貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用する場合、コンクリート、アスファルト、フェンス、ブロック、砂利等の構築物がある必要があります。その場合は、構築物を相続財産として申告しなければならない可能性があります。
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本コラムで取り挙げた題材はあくまで一例であり、構築物の状況も様々であるため、評価をする場合は専門的な知識や慎重な判断が求められます。
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