農地の評価
農地(田・畑)の評価は、農地法による宅地への転用制限があること、また、都市計画などにより地価事情も異なること等の事情から、その農地が次のいずれに該当するかに応じ、それぞれの方式によって行います。
- 農地の相続税評価額
1.農地とは、原則として地目が田又は畑である土地
農地は、農地法第2条において「耕作の目的に供される土地」と定められています。「耕作」とは土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培することをいいます。
また、「耕作の目的に供される土地」には、現に耕作されている土地だけでなく、いつでも耕作できるような休耕地や不耕作地等も含まれます。例えば、直ちに耕作の用に供することが困難な休耕地である場合や宅地の一部を家庭菜園等で使用している場合は、農地には該当しません。
相続税の計算においては、原則として土地の地目が田又は畑である場合に農地として評価をすることとなります。なお、土地の地目は登記簿上の地目ではなく、課税時期の現況によって判定します。そのため、登記簿上は田や畑であっても、現況が宅地や雑種地であると判定される場合には、農地としての評価は行いません。
地目の区分は、法務省の通達である不動産登記事務取扱手続準則に準じて判定します。同準則において田及び畑は下記の通り定められています。
- 農地の種類
2.農地の評価単位
農地は、1枚の農地(耕作の単位となっている1区画の農地)を評価単位とします。
ただし、市街地周辺農地、市街地農地及び生産緑地は、それぞれを利用の単位となっている一団の農地を評価単位とします。
なお、「1枚の農地」は、必ずしも1筆の農地からなるとは限りません。2筆以上の農地からなる場合もあります。また、1筆の農地が2枚以上の農地として利用されている場合もあります。
3.純農地は、倍率方式により評価
純農地とは、下記のいずれかに該当するものと定められています。ただし、市街地農地に該当する農地は除きます。
(1)農用地区域内にある農地
(2)市街化調整区域内にある農地のうち、第1種農地又は甲種農地に該当するもの
(3)上記(1)及び(2)に該当する農地以外の農地のうち、第1種農地に該当するもの。ただし、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地又は第3種農地に準ずる農地と認められるものを除く。
純農地は、農用地区域内にある農地等の宅地の価額の影響を受けていない農地であり、その農地の固定資産税評価額に国税庁の定める一定の倍率を乗じて評価します。(倍率方式)
- 純農地の評価額
4.中間農地は、倍率方式により評価
中間農地とは、下記のいずれかに該当するものと定められています。ただし、市街地農地に該当する農地は除きます。
(1)第2種農地に該当するもの
(2)上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地に準ずる農地と認められるもの
中間農地は、都市近郊の農地で売買価格が純農地よりも高い水準にある農地であり、その農地の固定資産税評価額に国税庁の定める一定の倍率を乗じて評価します。(倍率方式)
- 中間農地の評価額
5.市街地周辺農地は、市街地農地としての評価額の80%相当額
市街地周辺農地とは、下記のいずれかに該当するものと定められています。ただし、市街地農地に該当する農地は除きます。
(1)第3種農地に該当するもの
(2)上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第3種農地に準ずる農地と認められるもの
市街地周辺農地は、市街地農地ほどではないものの宅地化の傾向が強い農地であり、その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80%相当額を評価額とします。(路線価方式又は倍率方式)
- 市街地周辺農地の評価額
6.市街地農地は、宅地比準方式又は倍率方式により評価
市街地農地とは、下記のいずれかに該当するものと定められています。
(1)農地法に規定する転用許可を受けた農地
(2)市街化区域内にある農地
(3)農地法等の規定により、転用許可を要しない農地として、都道府県知事の指定を受けたもの
市街地農地は、都市計画により市街化区域と定められた地域における農地及び既に転用の許可を受けた農地等で、宅地化の傾向が強いものであり、その農地が宅地であるとした場合の価額から、その農地を宅地に転用するために必要な造成費用を控除した金額を評価額とします。(路線価方式又は倍率方式)
- 市街地農地の評価額
【例】
評価対象:市街地農地(路線価方式)
農地が宅地であるとした場合の1㎡当りの価額:50,000円
1㎡当りの宅地造成費の金額:1,000円
地積:200㎡
- 市街地農地の評価額の算定式
上記算式における「農地が宅地であるとした場合の価額」は、地域により評価方法が異なります。路線価地域の場合は、その路線価に基づいて計算します。倍率地域の場合は、近傍宅地の評価額(宅地としての固定資産税評価額×宅地としての評価倍率)に基づいて計算します。
近傍宅地とは、評価しようとする農地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地のことです。農地を評価する際には、近傍宅地との位置、形状等の条件の差(画地調整)を考慮して評価します。
また、「宅地造成費の金額」は、平坦地と傾斜地の区分によりそれぞれ金額が定められています。平坦地の宅地造成費における工事費目には、整地費、土盛費、土止費等があります。
宅地造成費の金額は、地域ごとに国税局長により定められます。路線価や倍率とともに例年7月頃に公表されています。
- 市街地農地を評価する場合の調整項目
7.生産緑地は、一定割合を控除して評価
生産緑地の価額は、生産緑地でないものとして評価した価額から、一定の控除割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価します。
- 生産緑地の評価額
控除割合は、下記の通り定められています。
- 生産緑地の控除割合
8.耕作権や永小作権等の権利が設定されている場合は、その権利の価額を控除して評価
農地を生前に第三者に貸して、その第三者が耕作しているような場合があります。農地法上の権利が設定されている農地であれば、相続税評価額から一定額の控除が認められます。
農地に権利を設定するためには、農業委員会又は都道府県知事の許可が必要となります。農地に設定する権利の種類には、耕作権や永小作権等があります。農地に権利が設定されているかは、各市町村の農業委員会が発行する農地基本台帳を閲覧することで確認ができます。
(1)耕作権の目的となっている農地
耕作権の目的となっている農地の価額は、その農地の自用地評価額から、耕作権の価額を控除した金額によって評価します。
- 耕作権の目的となっている農地の評価額
- 耕作権の価額
なお、耕作権割合は、農地の区分に従ってそれぞれ下記の通り定められています。
- 耕作権割合
(2)永小作権の目的となっている農地
永小作権の目的となっている農地の価額は、その農地の自用地評価額から、永小作権の価額を控除した金額によって評価します。
- 永小作権の目的となっている農地の評価額
- 永小作権の価額
なお、法定地上権割合は、その地上権の残存期間に応じて下記の通り定められています。
- 法定地上権割合
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本コラムで取り挙げた題材はあくまで一例であり、農地の状況も様々であるため、評価をする場合は専門的な知識や慎重な判断が求められます。
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