嫡出子と非嫡出子の違いについて
「子」は、「嫡出子(ちゃくしゅつし)」と、「嫡出子でない子」(以下、「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」)に分けられます。
「嫡出子」とは、法律上婚姻関係にある夫婦間に生まれた子をいいます。
「非嫡出子」とは、婚外子などとも呼ばれ、法律上婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。
また、「非嫡出子」は法律上2つの立場に分かれ、一方は親に「認知された子」、もう一方は「認知されていない子(いわゆる内縁関係の間に生まれた子)」であり、前者は相続権がありますが、後者は相続人となる資格自体がありません。
「嫡出子」、「非嫡出子(認知なし)」、「非嫡出子(認知あり)」について相続人となるかどうかを図に表すと、以下のような形になります。
◆認知された「非嫡出子」と「嫡出子」の相続分の違い
Q.嫡出子と非嫡出子との間には相続において従来違いがあったようですが、どのような違いがあったのですか?
A. 認知された「非嫡出子」は「嫡出子」とは全く同じ相続を受けることができず、認知された「非嫡出子」の相続分は「嫡出子」の2分の1に制限されていました。
この理由は、民法上は法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子を優先する法律婚主義を採用しているためです。
Q.平成25年に民法が改正された非嫡出子における改正内容を教えてください。
A. 「嫡出子」でも「非嫡出子」であったとしても、同じ母親から生まれたにも関わらず不公平が生じている事実に日本国憲法の定める法の下の平等に反するのではないかという指摘が従来からなされていました。
そこで、平成25年9月4日最高裁判所の大法廷(最大決平成25年9月4日)によって、「非嫡出子」の相続分を「嫡出子」の相続分の2分の1とする規定が法の下の平等を定める日本国憲法(14条1項)に反し違憲であるという判断がなされました。
これは、諸外国の状況や国民の意識の移り変わりを理由に、父母が婚姻関係になかったという、子としては自ら選択や修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、「非嫡出子」であっても個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考え方が確立されてきたことによるものでした。
なお相続は被相続人の死亡によって開始されますので、判決の内容は平成25年9月5日以後に亡くなった被相続人の相続について適用されます。
改正による影響を受けるのは、相続人の中に「嫡出子」と「非嫡出子」の双方がいる場合です。相続人となる子が「嫡出子」のみの場合や「非嫡出子」のみの場合では、子の相続分はこれまでと変わりません。
改正の前後での認知された「非嫡出子」と「嫡出子」の相続分の違いの変化について図に表すと、以下のような形になります。
◆認知された「非嫡出子」と「嫡出子」の相続分の違いの変化について
Q.最高裁判所の判決について何か注意点はありますでしょうか?
A. 最高裁判所は、民法に規定された「非嫡出子」の相続分を「嫡出子」の相続分の2分の1とする部分について、遅くとも平成13年7月当時において、法の下の平等を定める日本国憲法14条1項に違反していたとの決定をしました。
したがってそれ以前の相続には違憲判断は及ばないとしております。
また、平成25年9月4日までに相続開始した場合であれば、「非嫡出子」であっても、「嫡出子」と同じ法定相続の割合になりますが、この期間中に、遺産分割協議や裁判が終了しているなど、確定的なものとなった法律関係についてはその内容は覆らない判断もしています。
このように従来は、「嫡出子」と「非嫡出子」の間で法定相続分に違いがありましたが、最高裁の判決に従い、民法では「非嫡出子」の相続分が「嫡出子」の相続分と同等のものとして取り扱われるように改正が行われました。
Q 非嫡出子(認知していない)も私の大切な子供です。非嫡出子(認知していない)にも財産を相続させてあげたいと考えておりますが、どうしたらいいでしょうか?
A. まずは、認知を行うことかと思います。認知を行わないと相続人になりません。
ただし、子供が成人している場合は、その子供の承諾が必要であること等の条件がある場合があります。
さらに、認知を行っただけでは、その認知をしたもらった子供と、婚姻関係にある妻や嫡出子との間で、分割協議をうまく行えないことがあるかと思われます。
そのため、認知を行った、行っていないにかかわらず、遺言書の作成をしておくことをお勧めいたします。
遺言書の作成をしておくことで、ご自身がお亡くなりになった後、相続人間での分割協議を行うことなく、ご自身のお気持ち通りに財産を配分することができます。
ただし、「自筆」の遺言書ですと、このようなご家族関係の場合には、相続後に発見した人が隠蔽をしたりする可能性もありますので、「公正証書」の遺言書を作成し、第三者を遺言執行者としておくことで、お気持ちの通りに財産の配分がされる可能性が高まることになります。