1.共有不動産の評価の基本
共有の土地や建物の相続税評価額は、その土地や建物全体を評価したうえで、その評価額に共有持分を乗じて算出することになります。
例えば、下図のような土地(路線価は100,000円、面積は100㎡、夫の持分は1/2、妻の持分は1/2の土地)について、夫が死亡した場合の夫の所有する土地の共有持分の相続税評価額の計算方法は、以下のようになります。
まず、その土地全体を評価します。(一部の補正率の計算は省略しております。以下同じ。)
路線価100,000×100㎡=10,000,000円
そして、その評価額に共有の持分を乗じます。
10,000,000円×(1/2)=5,000,000円
このような計算を行い、土地の共有持分の相続税評価額を算出することになります。
2.小規模宅地等の特例との関係の基本
小規模宅地等の特例の適用が可能であった場合、その適用できる面積については、その土地の持分相当の面積のみとなります。
上記の例の場合、要件を満たしていた場合、100㎡×(1/2)=50㎡についてだけ、小規模宅地等の特例の適用が可能となります。
3.共有家屋(貸家)の敷地となっている宅地の評価
下図のように土地(自用地評価額1,000万円、夫の持分は1/1)の上に、共有家屋(貸家)(自用家屋評価額500万円、夫の持分は1/2、妻の持分は1/2)が建っていた場合の土地について、夫が死亡した場合の夫の所有する土地や家屋の共有持分の相続税評価額の計算方法は、以下のようになります。
(夫婦間で地代等のやりとりをしていなかったものとし、面積400㎡、借地権割合80%、借家権割合30%とし、賃貸割合は100%とします。)
●家屋については、貸家の評価額に共有持分を乗じて計算します。
5000万円×(1-0.3)×(1/2)=1750万円
●土地については、以下のようになります。①夫自身の家屋の持分に対応する部分(1/2)については、貸家建付地評価となります。
1億円×1/2×(1-0.8×0.3)=3800万円・・・貸家建付地部分
②妻の家屋の持分に対応する部分(1/2)については、自用地評価となります。
1億万円×1/2=5000万円・・・自用地部分
③上記①と②を足したものが、この土地の相続税評価額になります。
①+②=8800万円
4.小規模宅地等の特例について
上記の例の場合の小規模宅地等の特例については、妻と夫が生計一である場合、貸家建付地部分と自用地部分のどちらにも適用することができます。
実際に下記2つの適用方法で、土地の評価額がいくらになるのか計算してみます。
(1)貸家建付地部分に小規模宅地等の特例を適用した場合
小規模宅地等の特例による減額金額:3800万円×(1-50%)=1900万円
8800万円-1900万円=6900万円
(2)自用地部分に小規模宅地等の特例を適用した場合
小規模宅地等の特例による減額金額:5000万円×(1-50%)=2500万円
8800万円-2500万円=6300万円
(3)差
6900万円-6300万円=600万円
自用地部分に適用したほうが特例の効果が高くなりますが、自用地部分に適用できることを知らずに、貸家建付地部分に適用してしまった場合、後日、更正の請求の手続きをして相続税の還付の手続きを受けることができなくなってしまいます。
このように、共有の不動産の計算は複雑になってまいりますし、小規模宅地等の特例にも深く関係してまいります。小規模宅地の特例は、一度適用してしまうと、別の場所に適用しなおすことができない場合が多く、しかも税金に対する効果が大きいものですので、きちんと税理士に相談して税金の計算をすることをお勧めいたします。