共同ビルの敷地の評価
相続税を計算するうえで宅地の評価はとても大切ですが、今回は、宅地の評価単位で誤りやすい共同ビルの敷地について解説したいと思います。
下図のように、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんが共同でビルを建築したとします。
この場合の土地の評価額は、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんが所有している共同ビルの敷地すべてを合わせて1画地の宅地として評価し、その評価額を各土地の価額の比で按分するか、各土地の面積の比によって按分することによって算出します。
ここで注意すべき点として、以下のことが考えられます。
①自己所有地のみで評価をしないこと
②各土地の比、各土地の面積の比のどちらで評価するのが有利となるか検討すること
③類似の評価単位についての考え方の例と混同しないこと
1.自己所有地のみで評価をしないこと
自己所有地のみで評価をした場合と、全体で評価をした場合で、大きく評価が変わる可能性があることとして、地積規模の大きな宅地に該当して、規模格差補正率を乗じることができるかどうか、ということがあげられます。
①例えば、Aさんが、誤って自己所有地のみで評価をしてしまったとすると
500,000×1.00×400㎡=200,000,000円
(側方路線加算率や一部の補正率は省略し、三大都市圏以外に位置するとしております。以下同様とします。)
②きちんと全体を一画地であるとして評価したとすると
500,000×0.91×0.77(※)×1600㎡=560,560,000円
※0.77:規模格差補正率
これを面積で按分すると
560,560,000円×(400㎡/1600㎡)=140,140,000円
③評価額の差は
200,000,000円-140,140,000円=59,860,000円
となります。
このように規模格差補正率を乗じるかどうか(奥行価格補正率も変わっておりますが)で評価額が2、30%も変わることも少なくありません。
もし仮に誤って自己所有地のみで評価をしてしまっても、税務署から指摘され、相続税を還付してくれることはないかと思われます。
2.各土地の比、各土地の面積の有利判定
自己所有地が大きな道路に接しておらず、他のかたの所有地が大きな道路に接している場合などの場合は、各土地の比で評価額を算出したほうが有利になる場合があり、逆の場合は、各土地の面積の比で評価額を算出したほうが有利になる場合があります。
さきほどの例では、いきなり面積按分をしておりましたが、土地の価格の比で按分するか、面積で按分するかはどちらでもよいことになっておりますので、比較をしてまいります。
①土地の価格の比で按分
A土地:500,000×1.00×400㎡=200,000,000円
B土地:300,000×1.00×600㎡=180,000,000円
C土地:200,000×1.00×400㎡=80,000,000円
D土地:200,000×1.00×200㎡=40,000,000円
合計:500,000,000円
全体を一画地であるとして評価したとすると
500,000×0.91×0.77(※)×1600㎡=560,560,000円
これを土地の価格の比で按分すると
560,560,000円×(200,000,000円/500,000,000円)=224,224,000円
②面積の比で按分すると
560,560,000円×(400㎡/1600㎡)=140,140,000円
③評価額の差は
224,224,000円-140,140,000円=84,084,000円
このように評価額に大きな差が生まれる可能性があります。
3.類似の評価単位について
まず共同ビルの敷地の評価方法についてですが、
国税庁ホームページでは、以下のような理由から、このような評価をすべきであると記載があります。
共同ビルの敷地のように個々の宅地が他の筆の宅地と一体となって利用されているのであれば、他の筆の宅地をも併せた、利用の単位となっている1画地の宅地の価額を評価した上で、個々の宅地を評価するのが合理的です。
(国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/02/13.htm)
土地も建物も所有していて、お互いに使用収益を制約しているためこのような方法になるのかと思われます。
ここで、以下の2つの例をとりあげます。
①Dさんが建物の所有しておらず、AさんBさんCさんとの間で地代のやり取りをしている(賃貸借の)場合
このような場合、Aさん、Bさん、Cさんは、ABCDの土地すべてを合わせて1画地の宅地として評価すると考えられます。
DさんはD土地のみを1画地の宅地として評価すると考えられます。
(ただし、実際の面積や形状その他の状況により、異なる評価方法をする可能性もあります。)
②Dさんが建物の所有しておらず、AさんBさんCさんとの間で地代のやり取りをしていない(使用貸借の)場合
このような場合、Aさん、Bさん、Cさんは、ABCの土地を合わせて(D土地除く)1画地の宅地として評価すると考えられます。
DさんはD土地のみを1画地の宅地として評価すると考えられます。
(ただし、実際の面積や形状その他の状況により、異なる評価方法をする可能性もあります。)
このように建物の持分が無い場合(さらに賃貸借の場合、使用貸借の場合という場合分けがある)など、少し前提条件をかえるだけで評価方法が変わる可能性があります。
評価方法の違いで土地の評価額が大きく変わる可能性がありますので、まずは税理士にご相談されることをお勧めいたします。