地積規模の大きな宅地の評価
課税時期(通常、相続開始の日をいいます)が平成30年1月1日以降の場合の相続税等の計算において、「広大地の評価」は廃止され、「地積規模の大きな宅地の評価」が適用されることになりました。
1.地積規模の大きな宅地の評価とは
地積規模の大きな宅地に該当した場合、路線価等で計算された評価額に、さらに補正率を乗じて評価額を下げることができます。
こちらの補正率はその土地ごとに異なりますが、2.30%もの補正率を乗じることができる場合も少なくありません。
2.地積規模の大きな宅地の適用要件
①三大都市圏に所在する場合は500㎡、
三大都市圏以外の地域に所在する場合は1,000㎡以上の地積であること
②「普通住宅地区」または「普通商業・併用住宅地区」に所在すること
※倍率地域にある場合は普通住宅地区内に所在する場合は、この要件を満たすものとなります。
③市街化調整区域以外の地域に所在すること
※市街化調整区域であっても、宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域に所在する場合は、この要件を満たすものとなります。
④工業専用地域以外に所在すること
※用途地域の定めのない地域に所在する場合は、この要件を満たすものとなります。
⑤指定容積率が、東京都特別区に所在する場合は300%未満であること
東京都特別区以外の地域に所在する場合は400%未満であること
⑥倍率地域に所在する場合は大規模工場用地に該当しないこと
3.宅地以外の土地の適用について
雑種地や、市街地農地等(市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林及び市街地原野をいいます。)についても同様に適用の対象となります。
ただし、宅地への転用が見込めない場合については、地積規模の大きな宅地の評価の適用対象となりません。
4.評価方法
(1) 路線価地域に所在する場合
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。
評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)
(2) 倍率地域に所在する場合
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地については、次に掲げる①の価額と②の価額のいずれか低い価額により評価します。
5.規模格差補正率の計算方法
規模格差補正率は、次の算式により計算します(小数点以下第2位未満は切り捨てます。)。
上記算式中の「Ⓑ」及び「Ⓒ」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
(1) 三大都市圏に所在する宅地
(2) 三大都市圏以外の地域に所在する宅地
6.注意点
地積規模の大きな宅地に該当するかどうかで、土地の評価額は大きく変わる可能性があります。
上記2番記載の要件のうち、②以降については、その土地の地域性の問題であることが多く、相続人側で何とかできる問題ではないかと思われます。
ただし、要件の①については、1筆のみでの地積で判断するのではなく、1画地での地積で判断することになります。
つまり、「宅地の評価単位」の考え方と大きく関係し、遺産分割の方法により、適用できるかどうかも変わってくる可能性があります。
そのため、誤って相続税を多く払い過ぎないよう、まずは税理士に相談されることをお勧めいたします。
7.参考
①三大都市圏に該当する都市(平成28年4月1日時点)
②「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象の判定のためのフローチャート
(出典:①国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4609.htm
②国税庁平成29年10月:「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました)