1.宅地の評価単位
相続税申告書を作成するうえで、不動産の評価はとても大切です。
今回は、宅地の評価単位について述べたいと思います。
宅地の評価単位は3つのことを考えて判定していくことになります。
(1)取得者ごと
原則として、取得者が取得した宅地ごとに判定します。
以下のような取得の仕方をした場合は、青色の土地と、緑色の土地をそれぞれ分けて評価することになります。
ただし、宅地の分割が親族間等で行われた場合において、例えば、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」として評価します。
例えば、以下の図のように、著しく面積が小さくなるような場合は不動理分割とされ、青色と緑色の土地を合わせて全体で土地を評価することになります。
(2)利用単位ごと
原則として、宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利(原則として使用貸借による使用借権を除く)の存在の有無により区分し、他者の権利が存在する場合には、その権利の種類及び権利者の異なるごとに区分することになります。
以下のような場合、A土地とB土地は他人の権利の制約がないため、一体で評価し、C土地は借家権者、D土地は借地権者が存在するため、C土地はC土地のみで評価し、D土地もD土地のみで評価することになります。
(3)地目ごと
土地の価額は、原則として地目の別に評価しますが、2以上の地目からなる一団の土地が一体として利用されている場合には、その一団の土地はそのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価します。
以下のような場合、スーパーマーケットとその駐車場が一体として利用されていれば、A土地とB土地は一体で評価し、C土地、D土地はそれぞれ個別の評価することになります。
2.評価単位について相続後にできること
上記1.(2)(3)については、相続発生時点のもので評価するので、その後変更等しても意味はありませんが、取得者については、相続発生後に遺産分割協議により決めることですので、場合によっては、分筆等を行って取得者を分けて相続することで相続税額を抑えることができる可能性があります。
ただし、1.(1)の記載の通り、不合理分割には注意が必要です。
具体的にどのように評価額に影響がでるかを計算していきます。
(一部の補正率は省略させていただいております。)
<1>分筆
(1)Aさん1人が以下の土地を取得(更地、普通住宅地区に接道)
上記の場合の土地の評価額は、以下のようになります。
{1,200,000×0.91+540,000×0.03×1.00}×800㎡=886,560,000円
(2)分筆して、AさんBさん2人でそれぞれ以下のように土地を取得(更地、普通住宅地区に接道)
上記の場合の土地の評価額は、以下のようになります。
①Aさん取得の土地
{1,200,000×1.00+540,000×0.03×1.00}×400㎡=486,480,000円
②Bさん取得の土地
540,000×1.00×400㎡=216,000,000円
③合計
①+②=702,480,000
(3) (1)と(2)の差の比較
886,560,000円-702,480,000=184,080,000円
多少前提を簡便化しておりますが、大きな道路とそうでもない道路の2つに接している時などは、このように2つの路線価に差があることにより、評価額に大きな差がうまれることがあります。
なお、AさんBさんが共有で取得した場合は、(1)の評価額を1/2にした額をそれぞれ取得することになりますので注意が必要です。
<2>地積規模の大きな宅地
(1)AさんBさんCさんが、それぞれ地番ごとに土地を取得した場合(更地、三大都市圏以外)
筆(地番)が分かれていて、形も同じだし、3人それぞれで取得しようという話になったとします。
こちらの場合の土地の評価額は、以下のようになります。
①Aさん取得の土地
300,000円×400㎡=120,000,000円
②Bさん取得の土地
300,000円×400㎡=120,000,000円
③Cさん取得の土地
300,000円×400㎡=120,000,000円
④合計
①+②+③=360,000,000円
(2)Aさんが、まとめて土地を取得した場合(更地、三大都市圏以外)
こちらの場合の土地の評価額は、以下のようになります。
300,000円×0.78(※)×1200㎡=280,800,000円
(※)0.78・・・規模格差補正率:面積が大きい等一定の要件を満たす場合、一定の補正率を乗じることができます。
(3) (1)と(2)の差
360,000,000円-280,800,000円=79,200,000円
このように、どなたか1人が土地を取得し、他の方は金融資産で配分する等をしたほうが評価額が下がることがあります。
3.まとめ
宅地の評価単位を考えることは、宅地の評価をするうえでの第一歩となります。
第一歩目ではありますが、なかなか難しく、なれていないと税理士であっても間違えてしまうこともあります。
また、遺産分割協議をして登記手続きが終わった後に、上記のようなテクニックを行おうとしても、贈与とされてしまうため、その税効果を受けることができなくなってしまいます。
ご相続が起こり、相続税がかかる心配がある場合にはまず税理士に相談されることをお勧めいたします。