仮想通貨は相続税の対象になるか
仮想通貨に相続税が課税されるかどうかについて、まだ明確な法律はありません。
国税庁ホームページに「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて」(令和2年12月18日以降は「暗号資産に関する税務上の取扱いについて」)というQ&A(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm)が掲載されているのみとなっております。
こちらに以下のような内容が記載されており、相続税が課税されることとなっております。
相続税は、個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合に課税されることとなっており、この財産とは金銭に見積もることができる経済価値のあるすべてのものを言います。
一方、仮想通貨は「資金決済に関する法律」において、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と定義されており、国税庁も仮想通貨は貨幣機能を持つという認識を示しています。
よって、仮想通貨は相続税の課税対象となると考えられるため、他の相続財産と同じように相続対策を講じる必要があります。
仮想通貨の相続税評価額
仮想通貨か相続財産である場合、その評価額はいくらになるのでしょうか?
国税庁ホームページの「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて」というQ&A(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/faq/index.htm)によりますと、仮想通貨の評価方法については、評価通達に定めがないことから、評価通達5(評価方法の定めのない財産の評価)の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することとなります、と記載されております。
では何に準じて評価をするかといいますと、評価通達4-3(邦貨換算)の定めに記載されている、外国通貨の評価方法に準じて以下のように評価をすることになると記載されております。
活発な市場が存在する仮想通貨については、活発な取引が行われることによって一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかとなっていることから、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。 なお、活発な市場が存在しない仮想通貨の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないため、その仮想通貨の内容や性質、取引実態等を勘案し、個別に評価します。 |
ただし、具体的にどのようにして評価をすればよいのかわからない、相続開始時点における仮想通貨の残高等を証明する統一的な手続きが整備されていないという状況となっておりました。
そのため、国税庁から、仮想通貨交換業者に通知するなど、納税者自身による適正な納税義務の履行を後押しする環境整備を図っており、仮想通貨交換業者に依頼をすることで、「残高証明書」等の交付が受けられ、仮想通貨取引の適正な申告ができるようになってきております。
具体的には以下のような流れで評価をすることになります。
(1)仮想通貨交換業者に「残高証明書」等の交付依頼
(2)仮想通貨交換業者から、相続開始日(死亡日)現在の仮想通貨残高等を記載した「残高証明書」等の交付を受ける
(3)「残高証明書」等に記載の仮想通貨の残高等に基づき、相続税の申告書を作成・提出
(国税庁ホームページに「残高証明書等を活用した仮想通貨残高に係る相続税申告手続の簡便化(イメージ)」(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/faq/index.htm))
パスワード等が不明な場合
仮想通貨は通貨のように紙幣や貨幣が発行されているわけではありません。
仮想通貨はウォレットと呼ばれるウェブや端末上の財布で保管されており、そのウォレットにはパスワードが設置されています。
仮想通貨を相続した場合に、相続人がそのパスワードを知らなければ取引をすることができず、仮想通貨を引き出し、または処分することができないという問題があります。
そのような場合でも仮想通貨は相続税の課税対象となる財産に該当することとなるとおもわれます。
これについては、国税庁も、パスワードがわからないことを立証することが困難であり、当事者にしかわからない主観的な問題について、相続財産に該当しないということにすると課税の公平の観点から問題があることから、相続人が相続した仮想通貨のパスワードを知らない場合でも相続税が課税されるという見解を示しています。
※この記事は、令和2年9月に記載されたものです。
※令和2年5月1日に施行された「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(平成31年3月15日提出、令和元年5月31日成立)により、令和2年12月に国税庁から公表された資料からは「仮想通貨」の呼称が「暗号資産」へ変わっております。