国外にある財産を相続または遺贈により取得した場合
1.納税義務者の区分と課税財産の範囲
国外にある財産を相続または遺贈により取得した場合には、下記(1)または(2)の場合に応じ、それぞれに掲げる財産に対して日本の相続税が課税されます。
(1)財産を取得した人が無制限納税義務者に該当する場合
この場合には、相続または遺贈により取得した日本国内外にある全ての財産について、日本の相続税が課税されます。
なお、相続または遺贈により取得した日本国外にある財産について、その財産の所在する国において相続税に相当する租税が課せられた場合には、その租税のうち一定額については日本の相続税額の計算上、控除することができます。
詳しくは、「外国税額控除」をご覧下さい。
(2)財産を取得した人が制限納税義務者に該当する場合
この場合には、相続または遺贈により取得した日本国内にある財産についてのみ、日本の相続税が課税されます(相続または遺贈により取得した日本国外にある財産については、日本の相続税は課税されません)。
なお、この場合においては、日本国外の財産に対して二重課税が生じることはありませんので、外国税額控除の適用はありません。
2.財産の所在地
相続税の取扱いにおいて、取得した財産の所在地については、次に掲げる財産の種類に応じ、それぞれの場所によって判定することとされています。
(1)動産、不動産、不動産の上に存する権利
その動産又は不動産の所在地
ただし、船舶または航空機については、船籍または航空機を登録した機関の所在地
(2)鉱業権、租鉱権、採石権
鉱区または採石場の所在地
(3)漁業権、入漁権
漁場に最も近い沿岸の属する市町村またはこれに相当する行政区画
(4)金融機関に対する預金、貯金、積金または寄託金
その預金、貯金、積金または寄託金の受入れをした営業所または事業所の所在地
(5)保険金、共済金
その保険(共済を含む。)の契約に係る保険会社等の本店または主たる事務所の所在地
なお、日本国内に本店または主たる事務所がない場合において、日本国内にその保険の契約に係る事務を行う営業所・事務所等があるときは、その営業所・事務所等の所在地
(6)退職手当金等
その退職手当金等を支払った者の住所または本店・主たる事務所の所在地
なお、日本国内に住所または本店・主たる事務所がない場合において、日本国内にその退職手当金等の支払に係る事務を行う営業所・事務所等があるときは、その営業所・事務所等の所在地
(7)貸付金債権
その貸付金債権に係る債務者(※)の住所または本店・主たる事務所の所在地
※債務者が2以上ある場合においては、次の順の債務者
①主たる債務者がいるときは、主たる債務者
②主たる債務者がいないときは、次の順の債務者
イ.日本国内に住所または本店・主たる事務所を有する債務者がいれば、その(日本国内の)債務者
ロ.日本国内に住所または本店・主たる事務所を有する債務者がいなければ、その(日本国外の)債務者
(8)社債、株式、法人に対する出資または外国預託証券
その社債もしくは株式の発行法人、その出資のされている法人またはその外国預託証券の発行法人の本店・主たる事務所の所在地
(9)集団投資信託または法人課税信託に関する権利
これらの信託の引受けをした営業所、事務所等の所在地
(10)特許権、実用新案権、意匠権もしくはこれらの実施権で登録されているもの、商標権または回路配置利用権、育成者権もしくはこれらの利用権で登録されているもの
その登録をした機関の所在地
(11)著作権、出版権または著作隣接権でこれらの権利の目的物が発行されているもの
その目的物を発行する営業所または事業所の所在地
(12)著しく低い価額の対価で財産を譲り受けたことに基因して遺贈により取得したものとみなされる金銭
そのみなされる基因となった財産の種類に応じ、(1)~(11)または(13)~(16)のいずれかの場所
(13)上記(1)~(12)を除く、営業所・事業所を有する者のその営業所・事業所に係る営業上・事業上の権利
その営業所または事業所の所在地
(14)国債または地方債
日本国内にあるものとする。
(15)外国または外国の地方公共団体等の発行する公債
その外国にあるものとする。
(16)上記(1)~(15)以外の財産
その財産の権利者であった被相続人の住所地
なお、財産の所在地の判定は、その財産を相続・遺贈により取得した時の現況に基づいて行います。