公益を目的とする事業を行う者が取得した財産が相続税の非課税財産となる場合
相続税の非課税財産には様々なものがありますが、そのうちには、公益を目的とする事業を行う者が相続や遺贈によって取得した財産があります。
とは言っても、公益を目的とする事業を行う者が取得したものならば全て相続税の非課税財産となるわけではなく、相続税の非課税財産として取り扱われるためには、様々な要件を満たす必要があります。
公益を目的とする事業を行う者が相続や遺贈によって取得した財産が相続税の非課税財産となるためには、次の1または2に掲げる場合に応じて、それぞれに定める要件を満たす必要があります。
1.その者が個人である場合
この場合には、次の(1)~(4)の要件を全て満たす必要があります。
(1)その者の行う事業が、宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業(例えば、下記①~⑥のような事業)であり、その事業活動により文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するところが著しいと認められるものであること。
①社会福祉事業
②更生保護事業
③家庭的保育事業、小規模保育事業または事業所内保育事業
④学校または認定こども園を設置し運営する事業
⑤科学技術に関する知識の普及または学術の研究に関する事業
⑥図書館、博物館、これらに類する施設を設置し運営する事業
(2)その者が、その事業に専念していること。
(3)その者が、その相続または遺贈によって取得した財産をその取得の日から2年を経過した日において、その公益を目的とする事業の用に供していること。
(4)その者(※)またはその財産の相続に係る被相続人・その財産の遺贈をした者(※)に対して、その事業に係る施設の利用、余裕金の運用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給その他財産の運用及び事業の運営に関し特別の利益を与える事実がないこと。
※これらの者の親族等、その者と特別の関係がある者を含む。
上記(4)は、要するに、事業者やその特別関係者に私的な利益がもたらされている場合には非課税扱いとしない、という意味です。
2.その者が人格のない社団等である場合
この場合には、上記1の(1)~(3)の要件に加え、次の二つの要件を満たす必要があります。
(1)その社団等の事業運営の基礎となる重要事項(役員その他の機関の構成、その選任方法等)について、その事業運営が特定の者(※)の意思に従ってなされていると認められる事実がないこと。
(2)その社団等の機関の地位にある者、その財産の遺贈をした者(※)に対して、その社団等の事業に係る施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、その社団等の機関の地位にある者への選任その他財産の運用及び事業の運営に関し特別の利益を与える事実がないこと。
※これらの者の親族等、その者と特別の関係がある者を含む。
つまり、その社団等が特定の者によって私物化されている場合には、非課税扱いとされません。