相続財産を国等に寄付した場合
相続または遺贈により取得した財産については、原則として相続税の課税対象となりますが、相続または遺贈により取得した財産を国等に対して寄付した場合などには、一定の要件を満たすと相続税の課税対象とならない特例があります。
具体的には、下記1または2の場合に応じ、それぞれに掲げる要件を満たすときは、その贈与(寄付)した財産の価額またはその支出した金銭の額は、相続税の課税価格に算入されません(相続税の非課税財産となります)。
なお、ここで言う「相続または遺贈により取得した財産」には、みなし相続財産・みなし遺贈財産も含まれますが、贈与(寄付)するものは、その取得した財産そのものでなくてはなりません。
例えば、相続した土地を売却して得た金銭を国に寄付しても、この非課税の取扱いは受けられません。
1.相続または遺贈により取得した財産を国等に贈与した場合
この場合には、次の(1)~(4)の要件を満たす必要があります。
(1)相続税の申告書の提出期限までに、その取得した財産を国、地方公共団体または特定の公益法人等(※)に贈与すること。
※特定の公益法人等とは、公益社団法人もしくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人のうち、教育もしくは科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして一定のものをいいます。
(2)その贈与により、その贈与をした者(その者の親族等これらの者と特別の関係がある者を含む。)の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められないこと。
(3)その贈与を受けた者が特定の公益法人等であるときは、その特定の公益法人等が、その贈与のあった日から2年を経過した日においても、特定の公益法人等に該当していること、その贈与により取得した財産をその公益を目的とする事業の用に供していること。
(4)相続税の申告書に、この非課税の取扱いを受けようとする旨を記載し、かつ、その贈与した財産の明細書や一定の証明書類を添付すること。
2.相続または遺贈により取得した財産に属する金銭を特定公益信託の信託財産とするために支出した場合
この場合には、次の(1)~(4)の要件を満たす必要があります。
(1)相続税の申告書の提出期限までに、その取得した財産に属する金銭を特定公益信託のうち一定のもの(※)の信託財産とするために支出すること。
※特定公益信託のうち一定のものとは、その目的が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして租税特別措置法施行令第40条の4に定められている要件を満たすものをいいます。
(2)その支出により、その支出をした者(その者の親族等これらの者と特別の関係がある者を含む。)の相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められないこと。
(3)その金銭を受け入れた特定公益信託が、その受入れの日から2年を経過した日においても特定公益信託のうち一定のものに該当していること。
(4)相続税の申告書に、この非課税の取扱いを受けようとする旨を記載し、かつ、その支出した財産の明細書や一定の証明書類を添付すること。
このように、一定の要件を満たした上で相続財産を寄付することによって、相続税のメリットを受けつつ社会貢献をすることができます。