生命保険契約に関する権利の評価
「みなし相続財産・みなし遺贈財産」の3で説明しましたが、生命保険契約に関する権利については、契約者が次の算式によって計算した金額を被相続人から相続・遺贈により取得したものとみなされます。
これはあくまでも、例えば被相続人が自身以外の者のために保険料を負担していた生命保険契約(被保険者・契約者ともに被相続人ではないもの)に関する取扱いですが、相続開始の時において、まだ保険事故が発生していない生命保険契約(掛捨てのものを除く。)で被相続人が保険料の全部または一部を負担し、かつ、被相続人自身がその生命保険契約の契約者となっているものがある場合においては、その契約に関する権利については、本来の相続財産(遺産)として取り扱われ、その権利のうち上記の算式により計算した金額が相続税の課税対象となります。
評価方法
みなし相続財産・みなし遺贈財産と本来の相続財産(遺産)のどちらに該当する場合であっても、上記算式中の「生命保険契約に関する権利の価額」は、相続開始の時においてその契約を解約するとした場合に支払われることとなる、解約返戻金の額(※)によって評価されます。
※解約返戻金の他に支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、それらの金額を加算し、解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合には、その所得税額相当額を差し引いて、生命保険契約に関する権利の価額を評価します。
なお、保険事故が発生しなかった場合に返還金が支払われない生命保険契約(いわゆる掛捨て保険で解約返戻金のないもの)については、契約者に返還金を受け取る権利がないため、評価額は付されません。
実際のところ、解約返戻金の額等を自ら計算することは困難ですので、生命保険契約に関する権利の評価をする必要が生じた場合には、その契約の引受先である生命保険会社等に対して照会を行い、解約返戻金の額等の情報を提供してもらうこととなります。
注意点
生命保険契約に関する権利については、被相続人の死亡によって支払われる生命保険金等とは異なり、契約に基づく財産的価値を引き継ぐに過ぎませんので、生命保険金等に係る相続税の非課税金額(上限:500万円×法定相続人の数)のように、相続税の非課税財産となる金額が生じることはありません。