相続税の障害者控除
相続人が障害を抱えている方の場合、遺産を相続したとしても、相続税の負担が重くなり、かえって困ってしまうこともあり得ます。
例えば、遺産のほとんどを不動産が占めており、預貯金があまり残っていないケースでは、相続税を納付しなければならないものの、障害を抱えている相続人自身の預貯金を取り崩さなければならないことがあるかもしれません。
そこで、障害者の相続後における生活・資力への配慮から、障害者控除の制度が設けられています。
相続または遺贈により財産を取得した者が下記の適用要件を全て満たす場合には、その者の納付すべき相続税額の計算上、その障害の程度に応じ、一定の金額が控除されます。
適用要件
(1)相続または遺贈により財産を取得した時において日本国内に住所があること。
ただし、財産を取得した人が一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。
(2)法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。
(3)相続または遺贈により財産を取得した時において障害者であること。
控除額
- 一般障害者の場合:10万円×(85歳-相続開始時の年齢※)
- 特別障害者の場合:20万円×(85歳-相続開始時の年齢※)
※1歳に満たない端数については、これを切り捨てます。
障害者控除の適用を受ける者の納付すべき相続税額の計算に当たり、上記算式により算出した金額を控除しきれないときは、一定の範囲内で、その控除しきれない部分の金額をその障害者の扶養義務者の納付すべき相続税額から控除することができます。
ここで言う扶養義務者とは、配偶者、直系血族、兄弟姉妹、3親等内の親族のうち家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった者及び障害者と生計を一にする者をいいます。
障害者の範囲
障害者とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、失明者その他の精神または身体に障害がある者で一定の者をいい、控除額の計算に当たっては下記のように区分されます。
(1)一般障害者の区分例
①精神保健指定医等により知的障害者と判定された者
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
③身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている者
④精神または身体に障害のある65歳以上の者で、その障害の程度が下記(2)①、上記①または上記③に掲げる者に準ずるものとして市町村長、特別区の区長や福祉事務所長の認定を受けているもの
(2)特別障害者の区分例
①精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
②精神保健指定医等により重度の知的障害者と判定された者
③精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者のうち、障害等級が1級の者
④身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている者のうち、障害の程度が1級または2級の者
⑤原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている者
⑥寝たきりで複雑な介護を要する者のうち、精神または身体に重度の障害がある者
⑦精神または身体に障害のある65歳以上の者で、その障害の程度が上記①、上記②または上記④に掲げる者に準ずるものとして市町村長、特別区の区長や福祉事務所長の認定を受けているもの
なお、相続開始時に障害者手帳等の交付を受けていない者であっても、次の要件のいずれにも該当する場合には、障害者控除の適用を受けることができます。
- 相続税の期限内申告書の提出時においてその手帳の交付を受けていることまたはその手帳の交付を申請中であること。
- 医師の診断書により相続開始時の現況において明らかにその手帳に記載される程度の障害があると認められる者であること。