贈与税額控除(精算)
1.概要
相続時精算課税制度の適用を受けて財産の贈与を受けたとき、その贈与された財産が2500万円を超えていると贈与税を支払います。
その支払った贈与税は、相続税申告の時にその人が納付すべき相続税額から控除することができます。
これが、贈与税額控除です。
もし、相続税の金額よりも贈与税の金額のほうが大きく、贈与税を払いすぎている場合は、払いすぎた贈与税は還付されることになります。
今回は、相続時精算課税を適用した場合の贈与税額控除について解説します。
2.払った贈与税は相続税から控除できる
Aさんは、親から現金5,000万円を貰いました。
相続時精算課税制度を適用すると、Aさんが支払うべき贈与税は、500万円となります。
(計算式) (5,000万円-2,500万円)×20%=500万円
その後数年が経ち、Aさんの親が亡くなりました。Aさんの親は多額の資産を持っていたので、Aさんは相続税を納付することになりました。
この時、本来Aさんが支払うべき相続税額が700万円だったとします。
Aさんは700万円を納めるのではなく、実際に支払う金額は、200万円となります。
以前5,000万円をもらったときに贈与税500万円を納税しているからです。
(計算式)700万円-500万円=200万円
3.払った贈与税が戻ってくる場合もある
相続時精算課税を適用している人は、相続税額の計算上、その贈与税の額に控除しきれない金額が生じた場合には、その控除しきれない金額の還付を受けることができます。
上記の例で、みてみましょう。
もし、Aさんが支払うべき相続税額が100万円だったとしたら、どうなるでしょうか。
Aさんは、相続税申告をすることで、400万円還付を受けることができます。
(計算式)100万円―500万円=△400万円
4.相続税と贈与税の関係
相続税と贈与税は異なる名称の税金ですが、内容が似ており、切っても切りはなせられない関係があります。贈与税は、相続税の補完的は立場といわれています。
相続税も贈与税も人から人へ財産がうつったときに課税される税金です。
贈与税は、生きている人が、生きている人に財産を渡すときに、課税される税金です。
財産を渡すことは、その人の意思によることができるので、税率は高くなっています。
一方で、相続税は、亡くなった人の財産が生きている人にうつるときに課税される税金です。財産を渡す人は亡くなってしまったので、その人の意思は働きません。
相続は贈与と違ってやむ負えない部分がありますので、贈与税に比べて税率が低くなっています。
贈与税額控除は、相続税と贈与税の一体化課税という相続時精算課税制度の趣旨から設けられている措置です。
少し専門的な話になりますが、相続税額から控除される贈与税の金額は、贈与税の外国税額控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除きますので注意しましょう。
5.還付のための申告書
相続時精算課税制度による贈与税額を相続税額から控除してもなお控除しきれない金額がある場合には、税額の還付を受けることができます。
還付を受けるためには、相続税の申告書を提出する必要があります。
この場合には、精算課税に係る贈与者の相続開始の日から5年を経過する日までに、還付を受けるための相続税申告書を提出する必要があります。
還付金が還付される場合には、相続開始日の翌日から10ヶ月を経過する日と、申告書の提出日のいずれか遅い日の翌日から支払決定等をする日までの期間に応じた還付加算金が加算されます
6.必ず申告しよう
相続税申告書を作成する際に、相続人の方に「被相続人の生前に被相続人から贈与を受けていますか?精算課税の適用を受けた財産の贈与がありませんか?」とお伺いするのですが、相続人の方は忘れている場合がよくあります。
確かに、「実際に贈与を受けた日が数年前だったら、そんな昔のこと忘れているよ。」
また、「その贈与された金額が2500万円以下だったから贈与税も払っていないし、今回の相続税とは関係ないよね」などと思われている方のいらっしゃいます。
しかし、相続時精算課税の贈与は、必ず相続税申告しなければなりません。
相続時精算課税の贈与を受けたときに税務署に申告書類を提出しているので、税務署側は相続人が相続時精算課税を適用しているかどうかはすぐにわかります。
相続時精算課税を適用して贈与があったにもかかわらず、相続税申告書に記載せずに申告すると、必ず税務署から連絡がきます。
相続時精算課税は文字通り、「相続時」に以前納付した贈与税を「精算」して相続税を「課税」しますよ、という制度です。
申告することを忘れていると、延滞税や加算税などがかかる場合があります。
相続時精算課税を受けたときは必ず相続税申告に反映させることに注意しましょう。
7.その他の留意点
・相続又は遺贈により財産を取得しない場合でも、相続時精算課税による贈与を受けている場合には、相続税の納税義務があります。
・相続時精算課税の適用を受ける財産からは、債務控除をすることが可能です。
・相続時精算課税適用財産は物納に充てることができません。
・生前贈与加算された暦年贈与財産については、物納に充てることができます。