債務控除とは
債務は相続財産から控除できる
人が亡くなったとき、その人の相続人はその人が所有していた土地や家屋、現預金などのプラスの財産を相続すると同時に、その人が払うべきであった未払金などのマイナスの財産も併せて相続します。
例えば、Aさんは、分割払いで100万円の時計を購入しました。30万円を支払った後、残念ながらAさんは亡くなってしまいます。この時、時計の購入代金100万円のうち70万円がまだ支払っていない状態です。
Aさんは亡くなってしまったので、70万円を払うことができません。そこで、Aさんの相続人がAさんに代わって残りの70万円を払うことになります。この70万円がマイナスの財産です。
Aさんの相続人は、Aさんの時計と70万円の未払金を相続することになります。時計というプラスの財産と、未払金というマイナスの財産です。
このマイナスの財産は、相続税額を計算する中で、プラスの財産の相続価額から控除することができます。これを債務控除といいます。
被相続人が持っていた全てのマイナスの財産をプラスの財産から控除すことができるのかといえば、そうではありません。
相続財産から控除することができる債務と、相続財産から控除することができない債務があります。
今回は、債務控除について詳しく解説します。
控除することができる債務
相続財産から差し引くことができる債務は、相続税法では、「被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものと定義されています。
具体例を一つ一つみていきましょう。
①銀行からの借入金
これは明らかにマイナスの財産ですね。亡くなった時点の残高を控除することができます。
②未払の水道代、ガス代などの公共料金
水道代やガス代は、亡くなった時点までの金額を控除することができます。
一般的に公共料金は、月単位で請求されますので、月途中で亡くなった場合、亡くなった方が生きていた間の日数分の金額を日割り計算して、生きていた期間に対応する金額を控除することができます。
③治療費、入院費用などの未払医療費用
病気などで入院されていた場合、病院で亡くなることが多いですね。亡くなった後で、病院から入院していた期間の請求書を受け取ります。
この入院費用は、マイナスの財産として控除することができます。
④未払いの固定資産税
固定資産税は、1月1日に不動産を所有している人に対して課される税金です。
毎年4月頃に不動産がある地域の自治体から納付書が届きます。
固定資産税は4回に分けて納付し、納期限は4月、7月、12月、翌年2月頃になります。自治体によって異なりますので、お住いの市役所にお問い合わせください。
亡くなった人が1月1日に不動産を持っていれば、亡くなった時点で未払いの税金は控除することができます。
ただ、亡くなった時期に注意することが必要です。
少しややこしい論点もありますので、例を見てみましょう。
Aさんが所有している不動産の固定資産税は、4月、7月、12月、翌年2月がの納期限でした。
パターン1
Aさんは、4月分、7月分の固定資産税を払った後、10月に亡くなってしまいました。
この時、12月分と翌年2月分がまだ払っていないので、2回分が債務控除の対象になります。
パターン2
Aさんは、4月分、7月分、12月分の固定資産税を払った後、翌年1月に亡くなってしまいました。
この時、翌年1月分がまだ払っていないので、1回分が債務控除の対象になります。
そして、翌年分の固定資産税も控除することができます。
なぜなら、1月1日時点ではAさんは生きていたので、翌年の固定資産税もAさんが納付すべき税金だからです。
⑤未払の所得税
所得税の納期限は3月15日です。
亡くなった時点で未納付の所得税があれば納付する必要があります。
また、亡くなった後に所得税の確定申告をする場合があります。これを準確定申告といいます。準確定申告は、相続人が申告書を提出し納税しますが、亡くなった人が払うべき金額なので、準確定申告にかかる所得税は控除することができます。
もし、準確定申告で還付される所得税がある場合は、その所得税は被相続人のプラスの財産となりますので、相続財産に計上しなければなりません。
⑥未払いの住民税
住民税は12月末時点でその年の所得に対して課される税金で、毎年5月前後に納税通知書が届きます。亡くなった年の翌年に住民税が課税されることはありません。また、所得税のように準確定申告もありません。
亡くなった時点で、未払いとなっている住民税を控除することができます。
⑦預かり敷金
亡くなった人が不動産賃貸業を営んでいた場合、賃貸人から預かっている敷金があるケースがあります。敷金は、賃借人が退去したときに賃借人に返すという契約になっています。
亡くなった人は、賃借人のお金を敷金として預かっていただけなので、亡くなった人の財産ではありません。マイナスの財産として控除することができます。
⑧保証債務のうち求償不能のもの
控除することができない債務
①延滞税や加算税
亡くなった後に支払った公租公課のうち、延滞税や加算税などは控除することができません。延滞税や加算税は、税金の支払期日(納期限)を過ぎてしまったときにペナルティーとして課される税金です。これは、相続人の責任に基づくものとされているので、控除することはできません。被相続人が亡くなったときには、延滞税がかかるかどうかは確定していませんからね。
一方で、被相続人が、生前、納付することを忘れていて、課された延滞税などは、控除することができます。そのペナルティーは被相続人の責任だから、被相続人に課されるべき金額だからです。
②お墓を購入した際の未払金
お墓は相続税が課税される財産ではありません。つまり、お墓を相続しても相続税は課税されません。
被相続人が生前に購入したお墓の未払代金などは、非課税財産に関する債務として、控除することはできません。
税理士法人朝日中央綜合事務所にご相談ください。
相続税の申告は、被相続人が亡くなってから10か月以内という限られた時間の中で適正な申告を行わなければなりませんが、相続税は専門性が高く、申告の内容に誤りが生じやすい税金です。誤った申告をしてしまったために相続税とは別に罰金(延滞税、加算税等)を支払う、といった事例が少なくありません。
朝日中央綜合事務所では、相続専門の経験豊富な税理士が対応するため、お客様にとって最も有利で適切な申告を行います。さらに2名以上の税理士による厳重な所内チェックを経るため、申告内容に誤りが生じません。
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