相続した不動産を売却した場合の課税関係
相続した不動産を売却して譲渡益が出た場合は、所得税の申告も必要です。
譲渡所得は、次の公式により計算します。
また、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分類され、税率が変わってくるので、確認しておく必要があります。
取得費の算定方法
相続した不動産を売却する場合、相続人は被相続人の取得費と所有期間を引き継ぐことができます。そのため、不動産の購入当時の売買契約書を探して確認しておきましょう。もし、どうしても取得費がわからない場合は、譲渡価額(売却した代金)の5%相当額とします。
相続した不動産の売却には優遇措置があります。
相続税の取得費加算の特例について
相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却した場合は、相続税の一定額を取得費に加算できます。故人が事業を営んでいた土地で事業を引き継ぐ場合や、故人の事業がアパートなどの貸付の場合も減額措置があります。また、相続した不動産の売却で得た譲渡所得は確定申告する必要があります。上記の特例を利用する場合も申告が必要ですので、確定申告の時期には忘れず手続きしてください。
被相続人がお住まいの居住用財産(空き家)を売却した場合には、税務上の特例が受けられる可能性があります。
空き家の特例について
相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。
特例の対象となる範囲について
1.特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件全てに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります。)をいいます。
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- イ 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
- ロ 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
- ハ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定の事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合で、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋(以下「従前居住用家屋」といいます。)は被相続人居住用家屋に該当します。
2.特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいいます。
なお、相続の開始の直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。
【事例】被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の範囲
適用要件について
1.売った人が、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
2.次のイ又はロの売却をしたこと。
- イ 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
(注)被相続人居住用家屋は次の2つの要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(イ)の要件に当てはまることが必要です。
- (イ)相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
- (ロ)譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
- ロ 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
(注)被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(ロ)及び(ハ)の要件に当てはまることが必要です。
- (イ)相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
- (ロ)相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
- (ハ)取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
3.相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
4.売却代金が1億円以下であること。
この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行います。
このため、相続の時から被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した年までの売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例の適用を受けていた場合であっても、被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにこの特例の適用を受けた被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の残りの部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えたときには、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。
5.売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
6.同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
7.親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
適用を受けるための手続きについて
この特例の適用を受けるためには、次に掲げる場合の区分に応じて、それぞれ次に掲げる書類を添えて確定申告をすることが必要です。
1. 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合
- イ 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕
- ロ 売った資産の登記事項証明書等で次の3つの事項を明らかにするもの
- (イ) 売った人が被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を被相続人から相続又は遺贈により取得したこと。
- (ロ) 被相続人居住用家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
- (ハ) 被相続人居住用家屋が区分所有建物登記がされている建物でないこと。
- ハ 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」
(注)ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の6つの事項(被相続人居住用家屋が従前居住用家屋以外の場合は、(イ)及び(ロ)に掲げる事項)を確認した旨を記載した書類をいいます。
- (イ) 相続の開始の直前(従前居住用家屋の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
- (ロ) 被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等が相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
- (ハ) 被相続人居住用家屋が、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定の事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかったこと。
- (ニ) 被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで引き続き被相続人の物品の保管その他の用に供されていたこと。
- (ホ) 被相続人居住用家屋が被相続人の居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで事業の用、貸付けの用又は被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
- (ヘ) 被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続の開始の直前までの間において被相続人の居住の用に供する家屋が2以上ある場合には、これらの家屋のうちその老人ホーム等が、被相続人が主として居住の用に供していた一の家屋であること。
- ニ 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
- ホ 売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
2.相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売った場合
- イ 上記1のイ、ロ及びホに掲げる書類
- ロ 売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」
(注)ここでいう「被相続人居住用家屋等確認書」とは、市区町村長の次の4つの事項(被相続人居住用家屋が従前居住用家屋以外の場合は、(イ)から(ハ)に掲げる事項)を確認した旨を記載した書類をいいます。
- (イ) 上記(1)のハの(イ)の事項。
- (ロ) 被相続人居住用家屋が相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
- (ハ) 被相続人居住用家屋の敷地等が次の2つの要件を満たすこと。
- A 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
- B 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
- (ニ) 上記1のハの(ハ)から(ヘ)の事項。
相続した不動産を売却しようとすると、相続税は課税された上に、多額の譲渡所得税が課される場合があります。専門家へ相談し、特例につきうまく利用して税額を上手に抑えたいものです。