相続税の申告をしなければならない人
遺産の総額が相続税の基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合には相続税を払わなければならなりません。
相続又は遺贈により財産を取得した者は、相続財産の合計額が基礎控除額(※1)を超え、かつ、納付すべき相続税額(※2)があるときは、相続税の申告をしなければなりません。
※1.遺産に係る基礎控除額・・・3,000万円+600万円×法定相続人の数 ※2.申告要件のある特例の適用が無いものとして計算した場合の相続税額 |
遺産総額が基礎控除額を超え、かつ、相続税額が発生した人は相続税申告を行うこととなっています。
しかし、相続税がゼロとなっても相続税申告書を提出しなければならない場合もあります。
そればどのような場合でしょうか?
相続税の申告をしなければならない人(相続税の申告書の提出義務者)は、下記に該当する者です。
- 納付すべき相続税額が生じた人
- 申告をすることにより受けられる特例制度★の適用を受けた結果として、納付すべき相続税額がゼロとなった人
★ 申告要件のある特例制度は、主に下記の規定です。
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- 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例規定
- 国等に対して相続財産を寄付(贈与)した場合等の相続税の非課税規定
- 配偶者に対する相続税額の軽減の特例規定
税務署からのお尋ねが届いた場合
税務署から届いたお尋ねが、なぜ送られてきて、どのように回答したら良いかわからないという方も多いと思います。
税務署は市区町村から通知されたの死亡届によって相続の発生を認識します。
そして、市区町村から提供される固定資産の情報や、保険会社から送付される生命保険金の支払調書などの情報から一定の財産の状況を把握することができます。
これらの情報を基にお尋ねが送付されてきているのです。
返送しなくても罰則はありません。
しかし、できることなら相続税の申告書を提出するつもりであればその旨を記入し、基礎控除よりも相続財産が少く相続税申告を必要としない場合は、その旨を記入し、提出しましょう。
相続税の納税義務があるのに、うっかり申告納税を失念し、その後税務署からの指摘があったことであわてて納税する場合は、通常の相続税より重い税負担となります。
納税義務者が死亡した場合
相続税の申告書の提出義務者が、相続税の申告書の提出期限前にその申告書を提出しないで死亡した場合には、その死亡した者の相続人(包括受遺者を含む)が、その死亡した者の提出しなければならなかった相続税の申告書をその死亡した者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
被相続人C(令和2年4月3日死亡)の相続人であるAは、相続税申告書の提出前(令和2年6月4日)に亡くなりました。
この場合、被相続人Cに係る相続税の申告・納税は、本来D・E・Aで行うところ、Aの分の申告・納税についてはAの相続人であるB・F・Gがかわりに行わなくてはなりません。
相続税の申告期限は本来10ヶ月(令和3年2月3日)ですが、この場合のAの分の申告・納税についてはAの死亡時から10ヶ月(令和3年4月4日)となります。
なお、この場合の申告書の提出は、被相続人Cの住所地を管轄する税務署へ行います。
相続税を納税する前に亡くなったからといって、納税義務がなくなるわけではないので注意が必要です。
相続税の申告書の提出期限
相続税の申告・納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行わなければなりません。
例えば、被相続人が死亡したことを知った日が令和1年12月6日である場合には、令和2年10月6日が相続税の申告・納税期限になります。(相続発生日から10か月後の同じ日付)
「被相続人が死亡したことを知った日」=「相続開始日」ではない場合もあります。
遠方の親族で死亡から数日後に被相続人が亡くなったことを知った場合には、その親族が死亡を知った日の翌日から10月以内が申告期限となります。
また、相続人以外の者に遺贈があった場合には、その受遺者の相続税の申告期限は、自己のために遺贈があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。
相続人の場合には死亡を知った日から起算しますが、相続人以外の受遺者の場合には、自分が財産をもらえるかどうかは死亡日時点ではわかりませんので、遺言を内容を知った日から起算できるのです。
なお、この期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります。
相続税の申告書の提出先(納税地)
相続税の申告は、被相続人の死亡時における住所が日本にある場合は、その被相続人の死亡時の住所地を納税地として、その住所を管轄する税務署に対して行います。
なお、被相続人の死亡時における住所が日本国内にない場合には、次の①~②の提出義務者の区分に応じて、それぞれの場所を納税地として、これを所轄する税務署に対して行うこととなります。
本来の提出義務者
① 居住無制限納税義務者・制限納税義務者で、財産を取得した時において日本国内に住所を有するもの又は特定納税義務者
・・・日本国内の住所地
(日本国内に住所を有しないこととなった場合には、居所地)
② 非居住無制限納税義務者又は制限納税義務者で財産を取得した時において日本国内に住所を有しないもの及び居住無制限納税義務者、制限納税義務者
(財産を取得した時において日本国内に住所を有していたもの)又は特定納税義務者で日本国内に住所及び居所を有しないこととなるもの
・・・自ら定めた納税地で、その納税地を所轄する税務署に申告したもの
(その申告がないときは、国税庁長官が指定・通知する納税地)
相続税の申告書の提出義務があったのに提出しなかった場合
相続税の申告をしなければならないのにしなかった場合には、税務署による「決定」通知が来ることが考えられます。
税務署長による決定
相続税の申告書を提出しなければならない者が、申告書を期限までに提出せず無申告だった場合に、税務署が調査により税額を決定して通知してくる手続きが「決定」です。
申告を行う義務のある人が申告書を期限までに提出せず無申告だった場合や、納税を行わない場合などには、税務署が調査によりその人の納めるべき税額を決定します。
この場合には「配偶者の相続税額の軽減」等の特例の適用はありませんし、延納、物納、農地の納税猶予、非上場株式の納税猶予などの適用もできません。
また、納付すべき相続税本税の他に延滞税、無申告加算税、重加算税(隠ぺいなど悪質な場合)が課されることがあります。
期限内に申告書を提出した場合より重い税負担となりますので、相続税の申告期限までに申告・納税を行うことが大切です。