M&Aにより相続税の対策をする方法
相続税における株価評価は、評価する株式の発行会社を従業員数、総資産額及び取引金額により、大会社、中会社、小会社のいずれかに区分して、会社の規模に応じて、その区分ごとに類似業種比準価額方式もしくは純資産価額方式により評価するか、又は両方式を併用して評価します。
一般的に社歴が長く、業績が順調に推移している会社は、類似業種比準価額よりも純資産価額の株価が高い場合が多いといえ、また、会社規模が大きくなるほど類似業種比準価額のみで評価するか又は類似業種比準価額を用いる割合が大きくなります。
このような計算方法が財産評価基本通達に定められているため、例えば以下のような方法で非上場株式の評価額を引き下げる方法が考えられます。
合併
複数の会社を経営している経営者がいて、それらの会社の規模が小会社又は中会社であり、かつ類似業種比準価額よりも純資産価額が高い場合は、その複数の会社を合併して会社規模を大きくし、類似業種比準価額のみ又は類似業種比準価額を用いる割合を大きくすることにより株価を引き下げることが可能になります。
このような場合には、吸収合併・新設合併の両方の方法が考えられますが、合併後3年以内に相続が発生したりすると類似業種批准価額を用いることができず、逆に株価が上昇してしまうリスクもあるため、用心が必要です。
また、別のケースでは、複数の会社の株式を100%保有している経営者がいて、一方の会社は順調に発展しており資産・利益ともに毎期増大しているが、もう一方の会社は税務上の欠損金が多額に発生しており、純資産もマイナスという場合には、それらの会社を合併すると、純資産の金額が減少することで非上場株式の評価額を引き下げられるうえ、繰越欠損金を活用することで法人税を節税することも可能になります。
このような場合には、吸収合併で順調な会社を残す方法が考えられます
会社の後継者となる人物が身近に見当たらない場合には、会社を第三者に売却するケースもあると思います。このような場合、現状の株価と売却価格との比較や、株式を現金化して現金を相続人に生前贈与することにより、相続税を節税できるケースもあります。
税務上のリスク
組織再編を利用した事業承継には、税務上のリスクもあります。
経営目的がなく、税金の負担を不当に減少させるためだけの組織再編の場合、税務署に組織再編があったことを否認される可能性があります。
また、組織再編後において会社の業績や利益、配当等が大きく変化し、再編前後の会社実態に変化があると認められた場合には、類似業種比準価額の計算の際に、会社の1株当たりの類似配当金額等の計算における配当・利益・純資産の各要素が適切に把握できないことがあります。
税務上のリスクもありますので、M&Aで相続税の節税をお考えの方は一度専門家へ相談されるといいと思います。