1 申告期限と納税期限
相続税の申告期限は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内とされています。したがって、相続税の申告をする必要がある方は、その期限内に相続税の申告書を提出し、かつ相続税を納付(納税額がある場合)しなければなりません。
ちなみに、相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡時における住所が日本国内にある場合、被相続人の住所地を所轄する税務署です。財産を取得した人の住所地を所轄する税務署ではありませんので注意が必要です。
例えば、東京都千代田区霞が関にお住まいだった方が2020年1月1日に亡くなられた場合には、2020年11月1日が申告期限となりますので、その期限までに管轄の税務署である麹町税務署に申告書を提出し、かつ税務署や金融機関、郵便局の窓口などで相続税を納付しなければなりません。
お住まいの所轄税務署がどの税務署であるかは、以下の国税庁のホームページから検索していただけます。
国税庁ホームページ : https://www.nta.go.jp/about/organization/access/map.htm
2 罰金
上記の通り、相続税の申告期限は「その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」とされていますが、その申告期限までに申告書を提出しなかった場合や、提出はしても税金を納期限までに納めなかった場合、実際に取得した財産の額より少ない額で申告した場合などには、本来の相続税のほかに延滞税や加算税などのいわゆる罰金を科せられる場合があります。
相続税に係る罰金には下記の4種類があります。
(1)延滞税
(2)過少申告加算税
(3)無申告加算税
(4)重加算税
(1)延滞税
延滞税とは、相続税の納期限までに相続税を完納しなかった場合や、期限後申告書又は修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない相続税額がある場合などに課される税金であり、いわゆる利子に相当するものです。
なお、本来の相続税額が1万円に満たない場合、延滞税は発生しません。
延滞税額は、「未納税額 × 延滞税の税率 × 日数」により計算されます。
税率は、納税日が納期限の翌日から2月を経過する日までと、納期限の翌日から2月を経過した日以後の区分により異なります。
納期限の翌日から2月を経過する日まで
原則として年「7.3%」
ただし、平成12年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、「前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率+4%」の割合となります。
また、平成26年1月1日以後の期間は、年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合となります。
なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。
平成30年1月1日から令和2年12月31日までの期間は、年2.6%
平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年2.7%
平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年2.8%
平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年2.9%
平成22年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、年4.3%
平成21年1月1日から平成21年12月31日までの期間は、年4.5%
平成20年1月1日から平成20年12月31日までの期間は、年4.7%
平成19年1月1日から平成19年12月31日までの期間は、年4.4%
平成14年1月1日から平成18年12月31日までの期間は、年4.1%
平成12年1月1日から平成13年12月31日までの期間は、年4.5%
納期限の翌日から2月を経過した日以後
原則として年「14.6%」
ただし、平成26年1月1日以後の期間は、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となります。
なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。
平成30年1月1日から令和2年12月31日までの期間は、年8.9%
平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年9.0%
平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年9.1%
平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年9.2%
なお、特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の「短期貸出約定平均金利」の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
例えば、申告期限(=納期限)が2020年3月15日、相続税額が100万円の場合に、申告期限から3か月後の6月15日に納付した場合には、11,900円の延滞税が課されます。
① 納期限の翌日から2月を経過する日まで
未納税額100万円 × 延滞税の税率2.6% × 日数61日/365日
=4,345円
② 納期限の翌日から2月を経過した日以後
未納税額100万円 × 延滞税の税率8.9% × 日数31日/365日
=7,558円
③ ①+②=11,900円(100円未満の端数切捨て)
(2)過少申告加算税
過少申告加算税とは、期限内に相続税の申告書を提出していた場合において、その申告書に記載された税額が実際よりも過少であったときに課される税金をいいます。
ただし、税務調査の事前通知よりも前に誤りに気が付いて、自主的に修正申告書を提出し納税した場合には、過少申告加算税はかかりません。
税額は、「追加で納付すべき税額 × 過少申告加算税の税率」により計算されます。
税率は、税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合、その税務調査により更正があることを予知する前までに自主的に申告した場合、更正があることを予知した後に申告した場合で異なります。
具体的には、下記の通りです。
税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合 → 0%(課税なし)
税務調査の事前通知後からその税務調査により更正があることを予知する前までに自主的に申告した場合 → 5%(※10%)
税務調査により更正があることを予知した後に申告した場合 → 10%(※15%)
(※)期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超えるときの、その超えた部分に対する税率
平成28年12月31日までは、税務調査の事前通知がされた後であっても、更正の予知前に自主的に修正申告を行っていれば、過少申告加算税は課されないこととなっていました。
しかし、それを悪用して加算税を回避する納税者(あえて期限内に過少な申告書を提出しておき、事前通知を受けてから修正申告書を提出するなど)が出たため、そのような悪質な行為を抑制するため、平成28年度の税制改正により事前通知後には過少申告加算税が課税されるようになったのです。
(3)無申告加算税
無申告加算税とは、正当な理由なく申告期限までに申告しなかった場合に課される税金をいいます。
税額は、「納付すべき本来の相続税額 × 無申告加算税の税率」により計算されます。
(2)過少申告加算税と同じく、税率は、申告期限を過ぎて税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合、その税務調査により更正があることを予知する前までに自主的に申告した場合、更正があることを予知した後に申告した場合で異なります。
具体的には、下記の通りです。
税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合 → 5%
税務調査の事前通知後からその税務調査により更正があることを予知する前までに自主的に申告した場合
→ 本来の相続税額のうち50万円以下の部分:10%
→ 本来の相続税額のうち50万円超の部分:15%
税務調査により更正があることを予知した後に申告した場合
→ 本来の相続税額のうち50万円以下の部分:15%(※25%)
→ 本来の相続税額のうち50万円超の部分:20%(※30%)
(※)過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合の税率
(4)重加算税
重加算税とは、相続税を少なくするために相続財産を隠ぺいしたり、架空の債務を捏造した場合に課される税金をいいます。したがって、そもそも財産があることを知らなかった場合などには適用されません。
例えば、自宅の金庫内に被相続人の現金があった場合に、その現金が相続財産に該当することを知っていたにも関わらず、相続財産に計上しなかった場合などで、多くの場合、税務調査の際に発覚します。
税額は、「追加で計上すべき相続財産にかかる相続税の本税部分の税額 × 重加算税の税率」により計算されます。
税率は、相続税申告をしていた場合としていなかった場合で異なります。
具体的には、下記の通りです。
相続税の申告書を提出していた場合 → 35%(※45%)
相続税の申告書を提出していなかった場合(無申告であった場合) → 40%(※50%)
(※)過去5年以内に相続税で無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合の税率
以上のように、期限までに申告及び納税を行わないと本来の税金よりも多く支払うこととなります。
余分な税金を支払わないためにも、きちんと申告及び納税をすることが大切です。