相続人関係図の作成方法
相続の手続きをする際に必ず必要になってくるのが「相続人関係図」です。
家系図のようなものをイメージしていただくとわかりやすいかと思いますが、そうそう目にする機会も作る場面にも出くわさないでしょう。
では、一体この「相続人関係図」とは
・どのような図なのか?
・自分たちには必要なのか?
・作成するのに何が必要なのか?
・どうやって作ればよいのか?
・いつ使うのか?
というような疑問が湧いて出てくるのではないでしょうか?
ここでは、相続人関係図の書式から作り方、必要とされる場面について順にご説明していきたいと思います。
(1)相続人関係図とはどのような図なのか?自分たちには必要なのか?
「相続人関係図」とは、簡単に言うと亡くなられた人の「法定相続人が誰になるのか」を図にまとめたものです。
多くのケースでは下記のサンプルのような書式となっていますが、特に法的な書式が決まっているわけではありません。ご自身が分かりやすいよう自由に書いて頂いて結構です。
この相続人関係図、実は、金融機関や法務局で実際に相続の手続きを行う場面において、絶対に作らないと手続きが進められない!というものではないのです。しかしながら、そういった手続きを行っていくなかで、相続人関係図があれば相続人を一覧で確認できるため、求められて相続人が作成するケースが多いのです。
「相続人関係図」と字面だけ見ると、「なんだか作るの難しそうだなぁ...」と思ってしまいそうですが、上の図の通り、実際の作成はそこまで難しくないのでご安心ください。
(2)作成するのに何が必要なのか?どうやって作ればよいのか?
次に、相続人関係図を作成する際に必要な資料とその収集方法、その資料を基にした相続人関係図の作り方について説明したいと思います。
①必要な資料
相続人関係図を作成するために必要な資料は下記のものです。
・ 被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの連続した戸籍
・ 相続人の戸籍謄本
相続人が誰なのかは、「亡くなられた方の出生から死亡までの連続した戸籍」を取得することで、調べることができます。
具体的には、以下1~4のとおりです。下記手順を踏むことによって、相続人を調べることができます。一般的に、出生から死亡までの戸籍を集めると、5通~10通くらいの数になることが多いです。
- 亡くなられた方につき、死亡の旨の記載のある戸籍を、本籍地の役場にて取得する。
- 1の戸籍を見て、一つ前の戸籍がどこにあるのかを確認し、該当する役場にて戸籍を取得する。
- 亡くなった方の出生時の戸籍にたどり着くまで繰り返す。
- 相続人となり得る人がいれば、その人の現在戸籍を取得し、相続人であることを確定する。
ところで、上記2.の「一つ前の戸籍」とは何だかお分かりになりますでしょうか?
一つの戸籍に出生から死亡までの記載が全部載っていれば便利ですが、残念ながらそのようになっていないことがほとんどです。それは、戸籍というものが、本籍地の移転や、婚姻、法律の改正等によって、新たに作り直されるからです。
以下では戸籍の作り直しにつき、パターン別に見てみましょう。
パターン(1)
本籍地の移転
戸籍はそもそも本籍地の役場に備え置かれているものです。そのため、本籍地を移転させれば、戸籍も新しい本籍地にて作り直されることになります。
パターン(2)
婚姻
人は、出生時は親の戸籍に入っているのが通常ですが、婚姻をすると親の戸籍から抜け出て、新しい戸籍が作られることになります。たとえ本籍地を変えなかったとしても、婚姻すれば、戸籍が新たに作られることになります。
パターン(3)
改製
法律の改正によって、全国的に戸籍の様式が変更されることがあります。これを戸籍の「改製」といいます。
明治19年式戸籍、明治31年式戸籍、大正4年式戸籍、昭和23年式戸籍、平成6年式戸籍、があります。 戸籍が改正されると、たとえ本籍地を移転していなかったり、婚姻をしていなかったとしても、戸籍が新たに作り直されることになります。
ここまでご覧いただいて、「戸籍を集めるのって大変そう...」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
戸籍の収集自体は、相続人であればご自身で行うことが可能です。しかし、相続人調査は、被相続人の死亡時の戸籍から出生時の戸籍まで、一つずつ戸籍をたどっていく作業となり、慣れない方にとっては、非常に難しい作業となります。その理由としては、以下のような理由が挙げられます。
- 亡くなった方について、そもそも死亡時の本籍地が分からない。
- 亡くなった方が本籍地を何度も移している場合、その本籍地ごとに 戸籍を取らなければならない。
- 本籍地の役場まで行く時間がないし、わざわざ遠い役場に行くのも面倒。
- 郵送で戸籍を取寄せることができると聞いたが、実際にどう手続きしたらよいか分からない。
- 戸籍の読み方が分からず、一つ前の戸籍がどこにあるのか分からない。
- 古い戸籍を取得したが、手書きで作成されており、しかも達筆で書かれていたため、何と書いてあるか分からない。
- 「戸籍謄本」、「除籍謄本」、「改製原戸籍謄本」、「謄本」、「抄本」などの専門用語が出てきて、よく分からない。
- どこまで戸籍をたどれば、「出生」の戸籍までたどり着いたのか、分からない。
- 出生から死亡までの戸籍をすべて取得したものの、誰が相続人となり得る者なのか分からない。そのため、誰の現在戸籍を取得すればよいのかが分からない。
- 相続人の現在戸籍を取得しようと思い、現在戸籍を取得したが、その相続人は亡くなっていたことが判明した。
上記のケースに当てはまってしまった場合、すべての戸籍を集めるまでに、かなりの労力と時間がかかる可能性があります。
なかには、途中で挫折してしまう方もいらっしゃるでしょう。
もし大変そうだなと感じられたら、専門家に依頼することも検討されてみてはいかがでしょうか。
②相続人関係図の作り方
前述の通り、相続人関係図に法的な書式はありませんので、ご自身が分かりやすいよう自由に書いて頂いて結構です。サンプルは横書きですが、縦書きでも構いません。
ただ、これは記載した方が良い項目というのが何点かありますのでご紹介します。
・タイトルは「相続人関係図」で良いでしょう
・被相続人(亡くなられた方)の名前も大きめに記載した方が分かりやすいです
・被相続人の情報「最後の住所・死亡日・氏名」を記載します
・相続人の情報「住所・生年月日・氏名」を記載します
・上図では夫婦関係を二重線、親子関係を単線で表して区別していますが、他の方法でも構いません
(3)いつ使うのか?
では、相続人関係図が作成できたとして、一体どのような場面で使うことになるのでしょうか?
①不動産の登記を行う際に法務局へ提出する
不動産の所有者が亡くなられた場合、その不動産を相続した方へ名義変更を行う手続きを「相続登記」といいます。
この相続登記は法務局で行うのですが、申請書とともに法務局へ提出する書類の中に相続人関係図があります。
ただし、相続人関係図は絶対に法務局へ提出しないといけない、というわけではありません。
相続人関係図を提出しなくても、相続人が誰なのかを特定できる戸籍謄本一式を提出すれば良いのです。
しかし、相続人関係図を添付して戸籍謄本を法務局に提出すると、登記の調査が終了した後に、戸籍謄本の原本をそのまま返却してもらうことができるのです。
もう一つ原本を返却してもらう方法として、「全ての戸籍謄本のコピーを提出する」という方法があります。ただ、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍+相続人の戸籍となると、10通を超えることもありますので、コピーするだけで良いとは言え、少し手間だと感じてしまうかもしれません。
また、戸籍謄本は次の②や自動車の相続手続きなどでも使用しますので、各種の相続手続きごとに戸籍謄本などを取得していては、手間も費用もかかってしまいます。
相続人関係図を付けるだけで戸籍謄本が返却されますので、ぜひ頑張って相続人関係図を作成してみてください。
②預貯金等の解約等の相続手続きで金融機関に提出する
①の不動産と同じように、預貯金や有価証券等の解約・名義変更等の相続手続きを行う際には、各金融機関に相続人関係図を提出します。
金融機関によっては、相続人関係図の提出が必須となっているところ(その金融機関所定の相続人関係図が存在しているケースもあります)、特に必須ではないところと色々ありますので、手続きを始める前に確認しておいた方が良いかと思います。