葬式費用
1.葬儀費用は、相続財産から控除できる
人が亡くなると、お通夜や葬儀が行われます。
一般的には規模や形式にもよりますが、お通夜や葬儀には100万円~200万円程度の費用がかかると言われています。
葬儀費用は亡くなった方の債務ではありませんが、人が亡くなったことにより確実にかかってくる費用であるため、相続税を計算するうえで控除が認められています。
いわゆる経費のような取り扱いをイメージしていただければわかりやすいですね。
ただ、葬式費用といっても、内容によって控除できるものと控除できないものがあります。
今回は、葬式費用について詳しくみていきましょう。
2.葬儀費用はきちんと把握しよう
葬儀費用は、相続財産から控除することができるので、相続税を減らすことができる費用です。経費をもれなく計上できれば、税金の支払いは少なくてすみますよね。
だから、相続財産から控除することができる葬式費用をきちんと把握することが重要になってきます。
身内の方が亡くなったときは、深い悲しみの中、葬儀会社の手配や故人の親しい人への連絡、葬式の準備など短期間にやるべきことが多すぎて、相続のことが後回しになりがちですが、葬式費用を債務として相続税申告に計上することで、相続税の支払いを少なくすることができるので、領収書やメモは残しておくようにしましょう。
3.そもそも、葬式費用って何?
現代の日本では、葬儀の形式は、一般葬、家族葬、一日葬など様々な形式があり、葬儀の形式によってかかる費用も様々です。
最近、「終活」という言葉をよく耳にしますね。どんなお葬式にしたいのか、どんな風に見送ってほしいのか、亡くなる前に決めておく人が多くなっています。
なので、故人の意向によって、葬式は身内だけで後日お別れの会を開催したり、お墓は作らず海に散骨したり・・と昔に比べて多種多様な形式になってきました。
このように多様化する葬式費用を法律で定義することは困難なため、相続税法では、葬式費用について定義されていません。
しかし、ある程度は規定しないと相続税の計算ができないため、一定のルールが定められています。
葬式費用に該当するもの
①お通夜の費用
②告別式費用
③会葬御礼
お通夜や告別式の当日に参列者に渡す会葬御礼は、控除することができます。
④お寺に支払ったお布施
お寺や教会にお布施をしても領収書をもらえないことが多くあります。このお布施や心付けは葬式費用として控除することができますので、支払った日時・支払った金額・支払った先などメモを取っておきましょう。
メモがないと葬式費用として控除できないので注意が必要です。
⑤葬儀を手伝ってくれた人に対する心づけ
心付けは、上記のお布施と同様で領収書をもらえないことが多いので、こちらも、支払った日時・支払った金額・支払った相手先などメモを取っておきましょう。
心付けやお布施はいくらまでなら控除できるの、疑問に思われる方がいると思います。心付けやお布施は社会通念上相当と認められる金額までが控除対象となります。
例えば、1000万円を寺院に心付けとして渡しました。メモもあります。葬式費用として控除できますよね、いえいえ、できません。1000万円という金額は、心付けとしては世間一般的に高すぎる金額です。心付けとして控除することができる金額は、通常3,000~5,000円、多くても1万円までと言われています。
⑥火葬・埋葬費用
⑦遺体運搬費用
⑧納骨費用
⑨遺体の捜索や死体や遺骨の運搬に係った費用
葬式費用に該当しないもの
①香典返戻費用
控除できる場合と控除できない場合があります。
香典返戻費用とは、香典返しのことです。一般的には四十九日の法要が終わったあたりでいただいた香典のお返しとして、お渡しするものになります。
香典返しは葬式に必要なものとして認められていない費用なので、控除することができません。
なぜなら、お通夜や葬儀の際に参列者などからいただく香典は、亡くなった人の財産ではなく、遺族の財産として扱われるので課税されません。そのお返しとして香典返しを用意しても、亡くなった人とは関係ない費用となるので、葬式に必要な費用として認められないのは当然ですよね。
ただし、香典返戻費用が控除できる場合もあるのです。それは、会葬御礼との関係になるのですが、会葬御礼を渡した上でさらに即日香典返しもお渡しした場合、葬式費用として認められ控除することができます。
香典返戻費用という言葉だけで判断するのではなく、いつ香典返しをお渡ししたかに注意することが必要になります。
②墓石や墓地の買い入れのために係った費用
墓石や墓地の購入費用は控除することができません。
ただし、墓石を、誰が購入するのか、いつ購入するのかによって、相続税を少なくすることができます。
結論としては、親が生前に自分の墓石を購入することが相続税対策になります。
順番にみてみましょう。
まず、墓石は相続税がかからない財産です、親が墓石を所有しており、子がその墓石を相続しても相続税はかかりません。
親が生前に墓石を現金で一括購入するとします。すると墓石代金の現金が減り、墓石という財産が増えることになります。
墓石は相続税がかからない財産なので、減った現金分、相続税の課税財産が減ることになるのです。
③墓地を借りるためにかかった費用
④初七日、四十九日の費用
ただし、初七日については、通常は控除することができませんが、控除することができる場合もあります。
それは、初七日の費用と葬儀費用の区別ができない場合です。
親戚がまた日を改めて集まることが困難な場合もあるので、お通夜や葬儀の日に初七日を同時に実施することも増えてきました。葬儀会社からの請求書にも葬儀と初七日の費用を区別することなく記載されている場合もあります。
その場合は、初七日の費用についても、葬式費用として控除することができます。
4.葬儀費用を控除できるのは相続人のみです
葬儀費用を経費として控除することができるのは、葬儀費用を相続人が負担した場合のみです。相続人以外の人、例えば内縁の妻が葬儀費用を負担しても控除することはできません。
5.葬式を2回行った場合
通常は、お葬式は一回ですが、まれに2回行われることもあります。いわゆる仮葬式と本葬式です。この場合は、その両方にかかった費用が葬式費用として認められます。